タイの金乞い文化
「金乞い」という言葉があるのか知らないが、
タイには「物乞い」ならぬ「金乞い」が多い。
昔の話になるが、
タイに来た十数年前に初めて遭遇したのが、
バンコクのスクンビット。
路肩や歩道橋に居る「金乞い」の人々。
タイ人の多くは「彼らの哀れな姿」を見ると、
10バーツ硬貨を缶に差し入れる。
僕には、何か、しっくりとしない光景だった。
バンコクの「金乞い」は田舎から出て来て、
行き倒れて、途方に暮れてる人々とは違う。
彼らは食べ物などの物乞いはしない。
只、お金が欲しいのである。
彼らは、送迎トラックに乗って出勤してくる。
夜には、またトラックが来たら帰宅するので、
住家がある。
また、毎週水曜日が、定休日になっていた。
明らかに「金乞いビジネス」である。
10バーツ硬貨を缶に入れるタイ人たちは、
勿論、「金乞い」のその実体を知っている。
それでも、彼らにお金を渡すことを止めない。
「可哀想に見える」という光景にお金を出す。
それが、タイ人なのだ。
前後関係を無視して、その瞬間に湧いた感情
で判断するのがタイ人であり、だから成り立つ
のが「金乞いビジネス」なのだろう。
バンコクで働く労働者の日給が300バーツに
満たない時代に、バンコクの「金乞い」たちは、
1日1000バーツ以上稼いでいると、聴いた。
タイ人女性とスクンビットを歩いているときに、
彼女が、「金乞い」に硬貨を渡して、拝んだ。
「なぜ、彼らにお金をあげるの?」 と尋ねると、
「実入りが少ないと、手足を切られるのよ」
と言われて、ゾッとした。
「バンコクは、住みたくない街だな」 と思った。
彼女が「拝んだ」わけは・・・今になって思えば、
この世で徳を積んで、転生に期待するタイ人の
転生を信じる輪廻信仰だったのではないか・・・
「金乞い」が、
徳を積む場を与えている、
とも言えるのでしょうね。